Yamamoto's Laboratory
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箇条書き
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はじめに

箇条書きを上手に使うと,文書は分りやすくなります.文書の論理構造が視覚的にわかるからです.その一方,箇条書きを多用すると,隙間だらけの文書になり見た目が汚くなります.適度に使うことが肝要です.

箇条書きは,文章の段落 (パラグラフ) よりも下位の階層になることが多いです.なぜならば,普通,箇条書きには先行する文が段落にあり,その具体的な中身の説明に使われるからです.箇条書きが文章中に突然現れることはまれでしょう.しかし,LaTeX の箇条書きは段落と同じ階層になります.これでは箇条書きを使っても,論理構造が分かり難くなります.それを避けるために,私は箇条書きの環境を quote 環境で囲みます.すると,良い具合に箇条書きがインデントされます.本来,quote は引用文に使うべきですが,私は便利なので箇条書きのフォーマット調整に使っています.

LaTeX には,箇条書きのためにさまざまなコマンドが用意されています.ここでは,それらについて説明します.

箇条書きの例

具体的な箇条書きの例を示します.以下の LaTeX のソースリスト内の赤字の部分が箇条書きに鳴っています.箇条書きの環境 itemize を引用の quote で囲んでいます.こうすることにより,箇条書きを分り易くしています.\itemに引き続き,箇条書きの内容を記載します.

LaTeX で箇条書きを使った例

% -*- coding:utf-8 -*-
\documentclass[10pt,a4paper,dvipdfmx]{jarticle}
%
%=================================================
% ドキュメント開始
%=================================================
\begin{document}
\title{LaTeXを使う理由}
\author{山本昌志}
私が初めてTeXを知ったのは1991年のことです.当時は「ヘー」と思っただけで,特に興
味を引きませんでした.その頃,初めてMacintoshを使い始め,そのGUIに魅了されてい
たからです.Wordはお気に入りでした.それから二年も過ぎると,Wordの限界が見えて
きました.Word で博士論文を書く気にはならず,TeXを思い出しました.無事博士論文
を書き上げた後は,TeXがお気に入りになりました.

今ではほとんどの文書作成にTeXを使います.その理由は,
\begin{quote}
 \begin{itemize}
  \item 文書作成時間が短い.自動的にスタイルを決めてくれるので,文書の内容に集中
        できます.そのスタイルが俊逸なので,美しい仕上がりになります.
  \item 数式がきれい.
  \item 式番号や参考文献,その他の引用が簡単.
 \end{itemize}
\end{quote}
です.論理的な文書はTeXが良いですね.
\end{document}

以下は,このソースをコンパイルした結果です.美しい箇条書きです.

図1: 箇条書きの例

基本的な箇条書き

この節では,元々 LaTeX に用意されている (1)itemeze 環境,(2)enumerate 環境,(3)description 環境,そして自前の箇条書きの list 環境について説明します.

記号付き箇条書き(itemize)

記号により,箇条書きのアイテム (文章) を分ける itemeze 環境について説明します.通常,並立関係にあるアイテムを並べるときに使います.

基本

一般に,箇条書きのアイテムの区分を分かりやすくするために,文頭に記号をつけます.LaTeX では,itemize 環境を使うと記号付き箇条書きになります.アイテムの記述には,\item を使います.以下に,具体例を示します.

\begin{itemize}
      \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
      \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
      \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{itemize}

この itemize 環境で作成された文章を LaTeX で処理すると以下の箇条書きになります.

図2: itemize 環境を使った例

記号の変更

各アイテムの先頭を任意の記号(文字)にする場合は,\item の後に括弧を用い [記号(文字)] と記述します.具体的には,以下の通りです.

\begin{itemize}
    \item[$\clubsuit$] 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
    \item[$F=ma$] 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
    \item[文字もOK] 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{itemize}

この記号を変更した itemize 環境で作成された文章を LaTeX で処理すると以下の箇条書きになります.

図3: itemize 環境での先頭の記号を変えた例

番号付き箇条書き(enumerate)

enumerate 環境は,数字により箇条書きのアイテム (文章) を分けます.通常,順序関係があるアイテムを並べるときに使います.

基本

使い方は,以下のとおりです.

\begin{enumerate}
   \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
   \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
   \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{enumerate}

すると,以下のように番号付きの箇条書きになります.

図4: enumerate 環境の例

カウンター調整

カウンターを変更する場合は,「enumerate.sty」を使うことを強く推奨します.使い方は,高機能番号付き箇条書き「enumerate.sty」に示します.

見出し付き箇条書き(description)

アイテムごとに見出しが必要なときに使います.

基本

description 環境の \item コマンドのオプション引数に見出しを書きます.具体例を以下に示します.

\begin{description}
   \item[運動の第一法則]慣性の法則のことです.
   \item[運動の第二法則]運動方程式のことです.
   \item[運動の第三法則]作用反作用の法則のことです.
\end{description}

すると,以下の箇条書きになります.

図5: description 環境の例

見出しの後に改行

見出しの後に改行する場合は,「\mbox{}\\」を使います.具体的には,以下のようにします.

\begin{description}
   \item[運動の第一法則]\mbox{}\\
            慣性の法則のことです.運動方程式が成り立つ座標系を慣性系と言います.
            多くの場合,地球に固定された座標系(実験室系)が良い近似として使われま
            す.
   \item[運動の第二法則]\mbox{}\\
	    運動方程式のことです.
   \item[運動の第三法則]\mbox{}\\
	    作用反作用の法則のことです.
\end{description}

これをコンパイルすると,以下が得られます.

図6: description 環境で見出し後に改行の例

自前の箇条書き(list)

list 環境を使うと,自前のリストを作ることができます.

高機能番号付き箇条書き「enumerate.sty」

もともとある番号付き箇条書き enumerate 環境では,凝った番号付けをすることができません.「ennumerate.sty」は,そんな問題を解決してくれます.大変便利なので,導入を強く勧めます.

使い方

ennumerate.sty を使うためには,プリアンブルに「\usepackage{enumerate}」と書くだけです.そして,本文に以下のように記述します.

\begin{enumerate}[法則(I)]
 \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
 \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
 \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{enumerate}

オプション引数の「法則(I)」の I がカウンターで,その値がひとつずつ増加します.コンパイルの結果は,以下のとおりです.

図7: enumerate.sty を使った例

カウンター

以下の表に示す5種類 (1, A, a, I, i) のカウンターを使うことができます.これらのカウンターを表す5つの文字を,ここではカウンター文字と呼びます.カウンターは,

\begin{enumerate}[カウンターの文字列]

で設定を行います.文字列の中に現れるカウンター文字の部分がひとつずつ増加します.

enumerate.sty のカウンター
カウンター値の変化
11, 2, 3, 4, …
AA, B, C, D, …
aa, b, c, d, …
II, II, III, IV, …
ii, ii, iii, iv, …

使い方のメモ

カウンターとともに角括弧([…])やカウンターを示す文字 (1, A, a, I, i) を使う場合には,注意が必要です.カウンターとしてではなく,文字列中にこれらの文字を記述する場合は \textrm{ 文字 } とします.

以下に具体例を示します.この例では,カウンター文字列が「\textrm{ [力学I -- } 法則1\textrm{ ] }」となっています.一部の文字が \textrm{} と囲まれています.こうすることにより,角括弧とカウンターを表す文字 (I) を,たんなる文字として出力します.

\begin{enumerate}[\textrm{[力学I -- }法則1\textrm{]}]
 \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
 \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
 \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{enumerate}

こんなパイルの結果は,以下のとおりです.

図8: enumerate.sty を使った例

インラインリスト「paralist.sty」

改行しない箇条書き,すなわち本文中の箇条書きが必要な場合は,インラインリスト「paralist.sty」を使います.

使い方

paralist.sty を使うためには,プリアンブルに「\usepackage{paralist}」と書くだけです.そして,本文に以下のように記述します.

インラインリストの例

古典力学でも最も基本的な運動の法則は,
\begin{inparaenum}[(1)]
 \item 運動方程式が成り立つ座標系を決める慣性の法則; 
 \item 粒子の運動の時間発展を記述する運動方程式; 
 \item 力の相互作用の仕方を表す作用反作用の法則
\end{inparaenum}
です.

これをコンパイルすると以下が得られます.

図9: インラインリストの例

カウンター

以下の表に示す5種類 (1, A, a, I, i) のカウンターを使うことができます.これらのカウンターを表す5つの文字を,ここではカウンター文字と呼びます.カウンターは,

\begin{inparanum}[カウンターの文字列]

で設定を行います.文字列の中に現れるカウンター文字の部分がひとつずつ増加します.

enumerate.sty のカウンター
カウンター値の変化
11, 2, 3, 4, …
AA, B, C, D, …
aa, b, c, d, …
II, II, III, IV, …
ii, ii, iii, iv, …

カウンターを表す文字列の前に,これらのカウンター文字列を含んだ文字列を入れたい場合は波括弧 {文字列}で囲みます.以下に具体例を示します.

書き方の例 コンパイル結果
\begin{enumerate}[{example} a)] example a), example b), …
\begin{enumerate}[{A}-1] A-1, A-2, A-3, …
\begin{enumerate}[\bfseries {Item} I] Item I, Item II, …

カウンターのフォント設定

カウンターでフォントの設定も可能です.その例を以下に示します.

インラインリストの例

古典力学でも最も基本的な運動の法則は,
\begin{inparaenum}[\itshape a\upshape)]
 \item 運動方程式が成り立つ座標系を決める慣性の法則; 
 \item 粒子の運動の時間発展を記述する運動方程式; 
 \item 力の相互作用の仕方を表す作用反作用の法則
\end{inparaenum}
です.

これをコンパイルすると以下が得られます.フォント設定が反映されていることが分かるでしょう.

図10: インラインリストの例

ネスト(入れ子)

箇条書きは,入れ子にすることもできます.以下に,itemize の例を示します.番号付き箇条書きの enumerate も入れ子にできます.そればかりではなく,itemize と enumerate の混合の入れ子も可能です.

\begin{itemize}
 \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
    \begin{itemize}
      \item 慣性系とは,運動方程式が成り立つ座標系のことです.
      \item ガリレイ系と呼ぶこともあります.
      \item 多くの場合,地球に固定された座標系(実験室系)は良い近似です.
    \end{itemize}
 \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
 \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{itemize}

コンパイルの結果を以下に示します.

図11: itemize のネスト (入れ子) の例

調整

itemsep や parskip を使うと,箇条書きのアイテムの間隔の調整ができます.

itemsep による調整

項目間の高さの調整は,\itemsep で可能です.0がデフォルト値で,負の値を使うこともできます.

\begin{itemize}
   \setlength{\itemsep}{-5pt}
   \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
   \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
   \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{itemize}

図12: itemsep で間隔を変更した例 (入れ子無し)

入れ子になっている場合は,次のようになります.

\begin{itemize}
\setlength{\itemsep}{10mm}
 \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
    \begin{itemize}
      \item 慣性系とは,運動方程式が成り立つ座標系のことです.
      \item ガリレイ系と呼ぶこともあります.
      \item 多くの場合,地球に固定された座標系(実験室系)は良い近似です.
     \end{itemize}
 \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
 \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.
\end{itemize}

コンパイルの結果は,以下のとおりです.

図13: itemsep で間隔を変更した例 (入れ子有り)

parskip による調整

parskip を用いて,箇条書きの間隔の調整が可能です.ソースの例を以下に示します.

\begin{itemize}
\setlength{\parskip}{10mm}
 \item 運動の第一法則とは,慣性の法則のことです.
    \begin{itemize}
      \item 慣性系とは,運動方程式が成り立つ座標系のことです.
      \item ガリレイ系と呼ぶこともあります.
      \item 多くの場合,地球に固定された座標系(実験室系)は良い近似です.
     \end{itemize}
 \item 運動の第二法則とは,運動方程式のことです.
 \item 運動の第三法則とは,作用反作用の法則のことです.

以下に,コンパイルの結果を示します.

図14: parskip で間隔を変更した例

ページ作成情報

参考資料

  1. 見出し付き箇条書きの見出しの後に改行するテクニックは,東京大学のコンピュータサークル TSG (理論科学グループ)TeX分科会第五回に書いてありました.
  2. 「enumerate.sty」については,熊澤さんのenumerate.styのページを参考にしました.

更新履歴

2007年 ページの新規作成
2019年7月6日 全ての図を SVG に変換


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